「誰もが知っている船」を整備する、この仕事の特殊性
海上保安庁や自衛隊の船といえば、テレビのニュースで何度か目にしたことがある人も多いだろう。吉田工業有限会社はその船のエンジンや補機を修理・整備する専門集団で、JMU横浜事業所の鶴見工場を主拠点に磯子エリアでも稼働している。大手造船会社JMUの協力会社として安定した受注体制を持ち、三浦市に本社を構えながら横浜の現場で実力を発揮している。
この種の仕事は「どこでも頼める」ものではない。官公庁船の整備には特有の知識と精度が求められるため、信頼を積み上げた会社に仕事が集まる構造になっているという声が業界内でも聞かれる。
手を動かしながら学ぶ、ベテランとの距離感
吉田工業有限会社の育成スタイルの中心は、ベテランスタッフによるマンツーマンに近い現場指導だ。未経験で入社したスタッフでも、先輩の仕事を間近で見て、実際に手を動かしながらスキルを積み上げていける。玉掛けをはじめとする資格取得の支援制度もあり、理論と実技の両輪で成長できる仕組みが整っている。
「こんなに近くで職人の仕事を見られるとは思わなかった」という驚きを持つ入社者が多いという。年齢差に関係なくコミュニケーションが活発な職場のため、わからないことを聞きやすい空気が日常的に維持されている。個人的には、これが未経験者の離職率を下げる大きな要因になっているのではないかと感じた。
即戦力を求める声と、実力に応じた処遇の一致
造船所や船舶機械の現場で経験を積んできた人材に対しては、スキルを見たうえで即戦力として採用する姿勢を明確にしている。年齢制限を設けないのは、業界経験を重視する方針の裏返しだ。リーダーポジションへの登用も想定されており、マネジメントに関心がある経験者にとっては描きやすいキャリアパスが用意されている。
休日は土日を基本とし親会社カレンダーに準じた運用を取っており、繁忙期の残業・土曜出勤については事前に開示している。この種の正直な情報公開は、長期的に働いてもらうための会社側の誠意だと受け取れる。
海に近い地、三浦から横浜へ続く仕事の流れ
三浦市南下浦町菊名の本社から横浜の工場現場へ——この地理的なつながりは、吉田工業有限会社の成り立ちと無関係ではない。代表・岩澤秀名氏は漁業組合での勤務を経て船舶機械修理の世界へ入り、海と船に深く関わってきた経歴の持ち主だ。その経験が現在の会社の方向性、つまり官公庁船の整備に特化するというスタンスにも表れている。
「船が好きな人間にとっては天職に近い環境」という声もある。趣味として車いじりを続ける代表のように、機械と向き合うことを純粋に楽しめる感性を持った人間が集まっているのかもしれない。


